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いいかんじ

いいへんじのひとです、いいかんじです

あの

あの、渦を巻くような熱、爆音の中で、わたしたちは、たしかに、声を、目を、肌を、合わせていた。あのとき、あなたが「冗談じゃなくて、本気で」という類の言葉を発したこと、あなたは、覚えているだろうか。

冗談じゃない、という、冗談だったのだろうか。少なくとも、あのときのわたしは、本気でそれを受け取った。本気で受け取ったけれども、冗談で返してしまった。「それ、どういうつもりで言ってるの?」

現実や日常みたいなものからは、切り離されたあの場所は、知らない自分に出会う場所、だったらしい。知らない自分、それが、いわゆる本音なのかは置いといて。

たしかに、あのときのわたしは、わたしの知らないわたしだったし、あのときのあなたは、わたしの知らないあなただった。それを、鮮明に思い出すことは、もうできない。もしかしたら、夢だったのかもしれない。わたしたちは、もうあの場所にはいないから。

あのときは、あのときでしかなくて、あのときの言葉が、冗談でも、本気でも、あなたの知らないあなたが発した、よくわからない次元のものでも、いまはいまで。

だけど、やっぱり、

あのときのあなたに聞きたい、本気で、本気?って。 あのときのあなたに言いたい、わたしは本気、って。

あのときのあなたに、連れ出してほしかった。

わたしたちの間にあるものは、知らないうちに、かたちを変えてしまったけれど、わたしはわりと、あのときから、変わらないことのほうが多いよ。

あの場所に代わる場所は、わたしがつくる。だから、いつか、面と向かって聞いてほしい