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いいかんじ

いいへんじのひとです、いいかんじです

折り返し、各駅停車

東京に戻るのはいつも朝で、今日はあんまり急ぐ理由もないから、寄り道をしている。中学の頃の友人から、パンとコーヒーを買った。ぽわっとして、いつも何考えてるか何言ってるか分からないような子だったのに、いまではあんなにしゃんとして、「もう戻っちゃうんだ、東京」、455円。

昨日は、先生に会ってきた。先生とお芝居の話をするのは楽しい。なつかしい話をするのも、これからの話をするのも、夢のような話も、現実的な話も。いつも忘れちゃうんだけど、やっぱり、いちばん最初はここだったんだなあ、って思う。先生、なんにも変わってなかったけれど、煙草はやめたらしい。

去年の冬までは、最寄駅まで田んぼ道を15分、自転車でかっ飛ばしていて、(それは果たして最寄駅?)その道を久しぶりに走ったら、いろいろなことを思い出した。そのとき考えていたこととか、東京行ったらああだこうだとか、そのとき好きだったひとのこととか。なんにもないし、だれもいないから、うたうたいながら、遠くばかり見ていたんだなあ。上京したからといって、その遠くにたどり着けるわけもなく、まだまだふらふらしているんだけれど。

つくばエクスプレスは高い。めちゃくちゃ高い。なんで?ってくらい高い。そのお金あったら何できる?ってくらい高い。でも、つくばエクスプレス、高くてよかったなあ、と思う。わたしは、帰りたい、って思うために東京に来た。んだと思う。すぐ帰れたら、すぐ帰る。でも、すぐ帰れるような近さなら、わたしがそのつど死んで生まれた場所に、気づかないままでまた死んでしまう。歳をとるごとに、次に生まれる場所は、遠くなっていかなきゃいけないんじゃないかと、漠然と、いまは、思う。そこに戻ろうとする道で、いろんなことを思い出して、それをくり返していくんじゃないかなあ。感謝の気持ちとか、忘れちゃうからさ、遠くないと、やっぱり。帰りたいけど帰れない、それくらいがちょうどいい。

パンを売る彼女、とっても大人に見える。コーヒーサーバーの音に負けないように、小さすぎず、大きすぎず、「お持ち帰りですか?」と問う彼女が。彼女は忘れないんだろうな、いや、いったん死ななくたって、ずっとここで生きていけるのかな。分かんない。

わたしは東京に戻ります。