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いいかんじ

いいへんじのひとです、いいかんじです

上塗り

きれいごとは、きれいでないことをきれいだというから、きれいごとなんだろう。だとしたら、あの夜のすべては、きれいだ。きっと、きれいごとなんかじゃない。わたしが言う、わたし自身が言うんだから、きっとそうだ。そうだろう、世界。そう言わせてくれ、世界。世界という名の、小さな世間。

お人好しで、期待されがちで、いつもめちゃくちゃ不安なくせに、返事だけはいい。自分が好きな自分が嫌いで、嫌うことだけで救われていた。確かなものにしてほしかった。ほかでもない、あなたたちに。それ相応のものをずっと保ってきたつもりだったけど、いろんなものが溢れ出して、失望されるのがこわかった。「えーマジ、意外と気が小さいんだねえ」

正直、あの話が聞ければ、もうそれでよかった。負け惜しみではなく、きれいごとではなく、ほんとうに、満たされたんだ。ひとからは言われなれているそれは、ずっとうれしくもなんともなくて、イヤになりつつあるくらいで、でも、あなたに言われて、うれしかった。言うまで、言われるまで、気づかなかったけど、ほんとうはそれが聞きたかっただけだったんだ。わたしが泣いたのは、恋のせいじゃない。そんなものとっくに終わっていた。

高い珈琲、いつもの感じ、安いメッセージ、23時、5時、朝日の中を歩くことが、東京に来て増えてきた。全部、全部、踏みしめるたびに、強くなってる、って思った。

屑だ。ほんとうに、屑だ。こんなに屑だとは思わなかった。でも、愛してる。屑だけど、屑だから、愛してる。いままでも、いまも、たぶんこれからも、悔しいけど、愛してしまう。わたしがいちばん狂ってるんだ。

わたしは逃げない。だれかを愛することでしかわたしを愛せないことから、逃げない。うそ。どうしたってわたしはわたしを愛してしまうことから、逃げない。どうしようもないあなたたちを愛してしまうことから、逃げない。逃げない。強いから。

まーた言ってるよ、って思うでしょう。面と向かって言わないくせに、愛してるとか言ってんじゃねえ、って、思うでしょう。それからも、逃げない。詩的な、曖昧な、だれかさんのような、比喩表現には、逃げない。句点を使う。まっすぐに書く。

っしゃ!月並みの歌みたいで、きれいだ!それはそれで、それとしてきれいなんだ、全部。

あの

あの、渦を巻くような熱、爆音の中で、わたしたちは、たしかに、声を、目を、肌を、合わせていた。あのとき、あなたが「冗談じゃなくて、本気で」という類の言葉を発したこと、あなたは、覚えているだろうか。

冗談じゃない、という、冗談だったのだろうか。少なくとも、あのときのわたしは、本気でそれを受け取った。本気で受け取ったけれども、冗談で返してしまった。「それ、どういうつもりで言ってるの?」

現実や日常みたいなものからは、切り離されたあの場所は、知らない自分に出会う場所、だったらしい。知らない自分、それが、いわゆる本音なのかは置いといて。

たしかに、あのときのわたしは、わたしの知らないわたしだったし、あのときのあなたは、わたしの知らないあなただった。それを、鮮明に思い出すことは、もうできない。もしかしたら、夢だったのかもしれない。わたしたちは、もうあの場所にはいないから。

あのときは、あのときでしかなくて、あのときの言葉が、冗談でも、本気でも、あなたの知らないあなたが発した、よくわからない次元のものでも、いまはいまで。

だけど、やっぱり、

あのときのあなたに聞きたい、本気で、本気?って。 あのときのあなたに言いたい、わたしは本気、って。

あのときのあなたに、連れ出してほしかった。

わたしたちの間にあるものは、知らないうちに、かたちを変えてしまったけれど、わたしはわりと、あのときから、変わらないことのほうが多いよ。

あの場所に代わる場所は、わたしがつくる。だから、いつか、面と向かって聞いてほしい

花冷え

どちらも、愛しているけど、あなたも、どちらも、愛しているんだろうけど、どちらも、手に入れられるのは、わたしか、あなたか、どちらかでしょう、そしたら、わたしは、あなたを、嫌いにならなきゃいけないの?

それが、こわかったの

でも、いいかげんにしろ、わたし

前夜

ワンピースを着た。いつもよりも時間をかけてお化粧をした。美味しいものを食べた。ずっと会いたかったひとに会って、お話をした。だれかのためのものだと、つねづね思っていることを、今日は、わたしのためにした。今日は、ゆるしてほしかった。

いつだって、あきらめたふりをしながら、ほんとうはどこかで、気づいてほしい、ゆるしてほしいと思っている。わたしだけでは、わたしをゆるせないから、あなたに、気づいてほしいと思っている。いつだって。

ただ、わたしが思っているよりも、わたしをゆるしてくれるひとはたくさんいて、ここ最近は、それに気づけるようになって、素直にありがとうと言えるようになってきた気がする。意地を張ったり、ごめんなさいと言うよりも、きちんとありがとうをして、その分、わたしもそのひとをゆるしてあげられたらいい。そのほうが、ぜったいにハッピーだ。素直になる、なんて、大人になることと、反対のことだと思っていたけれど、どうやらちがったみたい。

気づいてくれるひとがいる、ゆるしてくれるひとがいる、そのことに気づけることがしあわせだ。満たされている、いま、とても。

だから、また明日、だれかのために、起き上がって、布団から這い出して、生きようって思うし、それこそがきっと、最高の「わたしのため」なんだと思う。

最高の一週間にします。

チーズケーキ

わたしは、ここにいたい。

だからこそ、目を離したすきにいなくなっちゃうようなひとに惹かれるんだろうし、惹かれるひとは目を離したすきにいなくなっちゃうんだろうなあと思う。

どうしたら、目を離したすきにいなくなっちゃうようなひとが、ここにいてくれるかなあ。いろんなところをふらっとしていたいけど、やっぱりここがいいって思って、戻ってきてくれるかなあ。

でも、やっぱり、どっちでもいいや。わたしは、ここにいたまま、惹かれつづけているんだろうし、どっちが強くて弱いとかないし。きっとどっちも強くて弱いし。

わたしは、ここにいます。

いちばん

ものごとには順番というものがありまして、その順番というものにもいろいろありまして、どの順番にしようかという、その順番もありまして、順番順番言いすぎて、何がしたいのかわかりません。

待っているひとがいるのかもしれない。なんとなくそんな気がするけれど、順番がある、順番があるの、そのひとに、いや、わたし自身に、言って聞かせている毎日です。

たまごサンドを選ぶように、今日もまた選んでしまうものがあって、それはいつも同じ味で、わたしはそれに安心して、でも、それ以上にさみしくて、いろいろありすぎて、かえってなにもなくて、それでも、満たさなきゃいけない空腹が、満たさなきゃいけない空白が、あって、とりあえず、たまごサンドを、なんでもないことを、選んでしまっているだけであって、わたしはほんとうにたまごサンドが一番好きなのだろうか、ひとりになってから、不安になる。いや、ちゃんと好きだけど、いつか、それを追いこそうとしているもの、こっちを見ながら待っていること、わたしは知っている。

一番もなにも、一つしかない

折り返し、各駅停車

東京に戻るのはいつも朝で、今日はあんまり急ぐ理由もないから、寄り道をしている。中学の頃の友人から、パンとコーヒーを買った。ぽわっとして、いつも何考えてるか何言ってるか分からないような子だったのに、いまではあんなにしゃんとして、「もう戻っちゃうんだ、東京」、455円。

昨日は、先生に会ってきた。先生とお芝居の話をするのは楽しい。なつかしい話をするのも、これからの話をするのも、夢のような話も、現実的な話も。いつも忘れちゃうんだけど、やっぱり、いちばん最初はここだったんだなあ、って思う。先生、なんにも変わってなかったけれど、煙草はやめたらしい。

去年の冬までは、最寄駅まで田んぼ道を15分、自転車でかっ飛ばしていて、(それは果たして最寄駅?)その道を久しぶりに走ったら、いろいろなことを思い出した。そのとき考えていたこととか、東京行ったらああだこうだとか、そのとき好きだったひとのこととか。なんにもないし、だれもいないから、うたうたいながら、遠くばかり見ていたんだなあ。上京したからといって、その遠くにたどり着けるわけもなく、まだまだふらふらしているんだけれど。

つくばエクスプレスは高い。めちゃくちゃ高い。なんで?ってくらい高い。そのお金あったら何できる?ってくらい高い。でも、つくばエクスプレス、高くてよかったなあ、と思う。わたしは、帰りたい、って思うために東京に来た。んだと思う。すぐ帰れたら、すぐ帰る。でも、すぐ帰れるような近さなら、わたしがそのつど死んで生まれた場所に、気づかないままでまた死んでしまう。歳をとるごとに、次に生まれる場所は、遠くなっていかなきゃいけないんじゃないかと、漠然と、いまは、思う。そこに戻ろうとする道で、いろんなことを思い出して、それをくり返していくんじゃないかなあ。感謝の気持ちとか、忘れちゃうからさ、遠くないと、やっぱり。帰りたいけど帰れない、それくらいがちょうどいい。

パンを売る彼女、とっても大人に見える。コーヒーサーバーの音に負けないように、小さすぎず、大きすぎず、「お持ち帰りですか?」と問う彼女が。彼女は忘れないんだろうな、いや、いったん死ななくたって、ずっとここで生きていけるのかな。分かんない。

わたしは東京に戻ります。